「国際ロマンス詐欺の詐欺師から接触を受けたことがある」、「騙されて被害を受けたことがある」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このような方は是非、詐欺事例の情報提供にご協力ください。
「もう終わった話だし自分には関係ない」、「どこに情報提供していいのかもわからないし」という方は、この記事を読んで情報提供の必要性や提供先について理解を深めていただければと思います。
■この記事でわかること
・国際ロマンス詐欺の情報提供先がどこなのかがわかる
・国際ロマンス詐欺の情報提供を行うべき3つの必要性がわかる
・国際ロマンス詐欺の情報提供に必要となる証拠がどのようなものかがわかる
・国際ロマンス詐欺の情報提供に関するよくある質問がわかる
国際ロマンス詐欺の情報提供先はどこ?-詐欺だと思ったらここに連絡-

それではまず、国際ロマンス詐欺に遭遇した際にはどこに対して情報提供すればよいのでしょうか。情報提供したくても適切な機関が分からない場合には対応できません。
そのためここでは、国際ロマンス詐欺事例に関する情報提供先について詳しく解説していきます。
消費者庁 消費者政策課
国際ロマンス詐欺ではないかと疑わしい場合には、「消費者庁 消費者政策課」に情報提供することができます。
消費者庁は、消費者政策に関する基本的なルールを立案・推進したり消費生活の制度・環境づくりを進める国の機関です。上記のような活動のほかに、消費者庁は、消費者問題やトラブルを防止・予防するために注意喚起や情報提供も行っています。「役務・サービス」に関する消費者トラブルの相談件数は年々増加傾向にあり、とくにSNSやマッチングアプリ・出会い系サイトなどネット経由で知り合った外国人を名乗る異性から海外送金を要求される国際ロマンス詐欺の相談は増えてきていると言われています。
消費者庁は「消費者ホットライン」という電話相談窓口を設置しており、「188(いやや!)」をダイヤルすることで国際ロマンス詐欺などに対する相談をすることができます。この消費者ホットラインに連絡することで、最寄りの市町村や都道府県の消費生活センターなどを案内してもらうことができます。
また国際ロマンス詐欺事例を情報提供するには、「消費者庁 消費者政策課」(法人番号5000012010024)に行うことができます。消費者庁のホームページによると、消費者庁への申し出・情報提供・お問合せについては、消費者庁大代表(03-3507-8800)に電話連絡することで関係部署に案内してもらうことができます。
内閣府 消費者委員会事務局
国際ロマンス詐欺については「内閣府 消費者委員会事務局」にも情報提供することができます。
内閣府の消費者委員会は、独立した第三者機関として、各種消費者問題について調査・審議をして消費者庁を含む関係省庁の消費者行政全般に対して意見表明を行うことや、内閣総理大臣・関係各大臣などの諮問に応じて調査・審議を実施することを主な目的として設置されている機関です。
この内閣府・消費者市委員会は詐欺的投資勧誘などの消費者トラブルに関して被害の発生と拡大を防止するため、または被害回復のための制度や取り組みなどについて調査報告を公表しています。また内閣府は国際ロマンス詐欺などが含まれる特殊詐欺に関する世論調査についても公表しています。
そして出会い系サイトやマッチングアプリなどで知り合い親密になった相手から、実態のわからない海外の投資サイトなどを紹介され出金ができなくなったという投資詐欺タイプの国際ロマンス詐欺が急増していることには国民生活センターからも警鐘が鳴らされています。
内閣府は「暮らしの相談窓口」を設置し、日々の暮らしを送るうえで国民が直面する悩みについて各種相談することができるようにしています。この窓口には国民の悩み事に応じて相談先がまとめられており、インターネット上での違法・有害情報などについて被害相談や情報提供をすることができます。
内閣府・消費者委員会事務局(法人番号2000012010019)の代表番号は、「03-5253-2111」です。
警視庁
国際ロマンス詐欺の疑いのあるケースは、「警視庁」に情報提供することができます。国際ロマンス詐欺を含む詐欺事例については、警視庁のホームページにおいて相談が寄せられている被害事例や被害防止策などが情報提供されています。インターネットを利用した詐欺の一覧内にSNS・出会い系サイトにおけるトラブル情報が掲載されています。また特殊詐欺については特設のサイトもあり、各種特殊詐欺の類型や予防策を情報提供して詐欺の撲滅に努めています。
インターネットを利用した詐欺については、警視庁の「サイバー犯罪に係る電話相談窓口」が設置されています(03-5205-1731)。平日午前8時30分から午後5時15分まで利用することができます。
警視庁は、市民から事件の情報提供を広く受けるために、情報提供先一覧をホームページにまとめています。
警視庁に事件・事故に関しては、警視庁のウェブサイト上のページからメールで情報提供することができるようになっています。「情報提供」のページ内の「事件・事故等に関する情報提供」の「その他の事件・事故に関する情報提供」を選択することで入力フォームのページに移動することができます。名前や住所、電話番号、概要欄を入力することで国際ロマンス詐欺事例について情報提供することができます。
インターネットを利用した詐欺など「サイバー犯罪に関する情報提供」や架空請求など「身に覚えのない料金請求メールに関する情報提供」については専用のメール入力フォームも用意されています。
ここで注意が必要なのは、警視庁の管轄区域は東京都であるため、東京都以外の詐欺事件に関する情報は、その区域を管轄する都道府県警察に送信・送付する必要があります。

各法律相談事務所
国際ロマンス詐欺に関しては、各法律事務所に相談・依頼することで情報提供ができる場合もあります。国際ロマンス詐欺について単なる法律相談をしただけで終了した場合には、情報提供としての意味は小さいかもしれませんが、具体的に弁護士に依頼して事件処理が進んだ場合には有効な情報提供となるケースもあります。
まず、国際ロマンス詐欺は詐欺罪にあたる刑事犯罪ですので、被害者は被害届・刑事告訴するのが原則的な対応です。弁護士に詐欺事件を依頼している場合には、代理人弁護士を通じて警察に告訴などをしていくこともあります。その場合には、警察に対して国際ロマンス詐欺の具体的な被害ケースとして適切に情報提供がされることになります。
場合によってはウェブサイトやテレビ報道など各種メディアを通じて同一犯や同様な手口によって被害に遭っている被害者らに注意喚起・情報提供される可能性もあります。
また国際ロマンス詐欺を専門的に取り扱っている法律事務所であれば、事務所のホームページ上に実際に寄せられたロマンス詐欺被害の相談事例や詐欺師の手口として情報を提供することもできるでしょう。もちろん弁護士は依頼者に対して守秘義務を負っているため、あなた個人を特定できるような形で一般の第三者に情報提供がされることはありませんのでご安心ください。
以上から、各法律事務所の弁護士に国際ロマンス詐欺事件を依頼することが、適切な情報提供につながる可能性があります。

国際ロマンス詐欺の情報提供は行うべき?-情報提供の必要性-

それでは、あなたが国際ロマンス詐欺の詐欺師と思われる相手から連絡を受け取った場合や過去に被害に遭ったような場合には、情報提供を行うべきなのでしょうか。遭遇した方の中には、「もう過ぎたことなので国際ロマンス詐欺のことは忘れてしまいたい」、「自分は詐欺の被害に遭わなかったので困っていない」という方もいらっしゃると思います。
しかし、国際ロマンス詐欺事例を情報提供することにはさまざまな法的・社会的な効果があるためここで解説していきましょう。
被害者救済の観点
まず情報提供することによって被害者が救済される可能性があるという効果を挙げることができます。適時・適切に関係機関に情報提供することで被害者が騙し取られた現金を取り戻せる可能性があります。
例えば「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(振り込め詐欺救済法)」による救済制度が利用できる場合があります。預金口座などへの振り込みを利用して行われた詐欺行為により被害を受けた被害者が利用することができる救済制度です。これは詐欺師が悪用している預金口座を凍結・取引を停止をして、その預金口座に残っている現金を被害者に分配することになります。
そしてこのような救済制度により被害回復を図ろうとする際には、振り込み先口座がある金融機関や警察に適切に国際ロマンス詐欺被害の情報提供を行う必要があります。
このように、関係機関に適切に情報提供することでケースによっては被害者の被害回復ができる場合があるのです。
2次被害の撲滅
また国際ロマンス詐欺の情報提供をすることは、2次被害を撲滅することにつながります。
国際ロマンス詐欺などの特殊詐欺の予防・抑止をするためには、詐欺行為を認知した一般市民が詐欺と思われる事案に遭遇した場合に、その事実を迅速に警察などの他者に伝えるという情報提供行為が重要となっています。
詐欺行為を認知してすぐに情報提供をすることで、警察による加害者・詐欺師の検挙可能性が高まります。そして詐欺師が逮捕されることで将来の詐欺被害の発生を阻止・抑止することができるのです。
また、国際ロマンス詐欺の事例においては、短期的、同じ場所・同じツールで集中的に発生するという傾向が顕著にみられます。そのため地域社会やSNSで迅速に情報共有されることで、その場所にいる人・そのツールを利用している人全体が将来、国際ロマンス詐欺の被害に遭うことを防げる可能性があります。
変動する手口へのけん制
さらに情報提供には、変動する国際ロマンス詐欺の手口に対するけん制という効果も発揮します。
国際ロマンス詐欺によって現金を騙し取られた場合、多くのケースで被害回復が難しくなっているのが実情です。犯人が海外に所在している場合などでは日本の警察行政権は海外では通用せず、国際的な協力なしでは検挙することも難しくなっています。
そして国際ロマンス詐欺の手口もどんどん巧妙化・複雑化してきています。
そこで詐欺行為に遭遇した一般市民による情報提供行為は、それらの詐欺集団に対して「犯罪は許さない」「常に目を光らせて監視している」という、けん制のメッセージを発することになるのです。国際ロマンス詐欺グループは目覚ましく国際展開しており、日本の国内・国外に拠点を有し、各国に協力者を置いているというケースも存在しています。
被害者が詐欺グループに活動資金として財産を騙し取られ、これ以上詐欺集団を肥え太らせないようにするためにも、市民からの情報提供行為は重要な役割を果たしているのです。
国際ロマンスの情報提供には何が必要?-詐欺かどうかを調べる証拠-

国際ロマンス詐欺の情報提供をする場合には、どのような資料が必要となるのでしょうか。できるだけ正確で詳細な情報を提供するために必要となる証拠について解説していきます。
実際に送られてきた写真
まず、国際ロマンス詐欺師の疑いがある相手から実際に送られてきた写真は、重要な証拠となる可能性があります。
まず相手から送られてきた写真によって犯人が特定できる可能性があります。相手の実際の顔写真が写っている場合や、特定の場所などが判明する場合には人物が特定でき相手の検挙につながる場合があります。
しかし詐欺師は、インターネット上に存在している無関係な画像を使用しているという可能性もあります。そのような場合でも、同じ画像を使いまわして複数の被害者を騙しているような場合には同一詐欺グループの犯行である可能性も出てきます。複数の被害届が出されている場合には、新しい情報が加わることによって捜査が進展する可能性もあるのです。
したがって、詐欺師か怪しいと思っている相手から実際に送られた画像は、証拠としてすべて保存しておくことが重要です。
やり取りのスクリーンショット
また詐欺師と思われる相手とのやり取りが分かるスクリーンショットなども重要な証拠となります。
相手の行為に詐欺罪が成立するには、欺く行為(欺罔行為)によって相手が錯誤に陥った状態で財物を交付したといえなければなりません。詐欺師側にそのような欺罔行為があったといえるかについては、被害者と実際に交わした会話やメッセージなどのやり取りが事後的に確認できる必要があります。
そこで、フェイスブックやインスタグラムなどSNSを利用したダイレクトマーケティングのやり取りや、マッチングアプリや出会い系サイト上でのやり取り、LINEのトーク画面などを保存しておくことが重要です。
ツールによっては時間の経過によって過去のやり取りが参照できなくなったり、LINEのように事後的に相手方がメッセージを削除できてしまったりする場合もあるため、やり取りの履歴についてはスクリーンショットなどを利用して保存しておくことが重要です。
相手の個人情報(口座番号)など
振り込みを指定してきた送金先の口座番号、口座名義人、電話番号など、相手方の個人情報についても保存しておきましょう。
相手の個人情報によって、金融機関口座の持ち主や携帯電話の契約者が判明する場合があります。相手に関連する個人情報は多ければ多いほど犯人の検挙につながります。SNSやマッチングアプリのアカウント名やLINEのIDなども本人特定に役立つ可能性があります。
国際ロマンス詐欺の情報提供に関するよくある質問は?

ここでは国際ロマンス詐欺の情報提供に関連したよくある質問について解説していきます。
国際ロマンス詐欺情報が一覧で確認できる場所はある?
国際ロマンス詐欺については、公的な機関やそのホームページなどにおいて情報提供や注意喚起がなされています。したがって各種機関のウェブサイトの該当ページを確認することで国際ロマンス詐欺に関する詐欺情報を網羅的にチェックすることができます。
国際ロマンス詐欺に関して情報提供しているのは、以下のような機関です。
・消費者庁
・消費生活センター
・国民生活センター
・越境消費者センター(CCJ)
・警視庁
・各法律事務所 など

国際ロマンス詐欺情報を警察に提供するとどうなる?
国際ロマンス詐欺の情報を警察に提供するとどのように手続きは進むのでしょうか。
国際ロマンス詐欺被害について警察に告訴・被害届を提出した場合、事件として捜査がなされ被疑者が判明すれば逮捕されることになります。その後検察官に送致され勾留を経て、起訴された場合には刑事裁判にかけられることになります。
ただし、初回の相談では被害届を受理してもらえない可能性もあります。「この内容では被害届は難しい」などと言われ、改めて証拠や情報整理が必要となるケースもあります。スムーズに被害届を受理してもらうためにも相談番号や相談を受けてくれた警察官の名前と階級(官職と氏名)を控えておきましょう。
国際ロマンス詐欺情報と匿名提供したいんだけどどうすればいい?
犯罪に関する情報を匿名で通報できる「匿名通報ダイヤル」という専用ダイヤルが存在しています。これは警視庁から委託を受けた民間団体が市民からの通報をフリーダイヤル(0120-924-839)やウェブサイトによって受け付けているサービスです。
このような専用ダイヤルは、身元を知られたくないことを理由に情報提供をためらっている人にも犯罪情報を提供してもらうために設置されています。「匿名通報ダイヤル」で通報する場合には、氏名や電話番号のような通報者の情報を提供する必要はありません。通報者には受付番号が通知され、通報以降はこの番号を利用してすべての事務処理が行われるため、身元が捜査機関や犯人側に伝わることもありません。
まとめ:国際ロマンス詐欺の情報提供は行うべき-被害者を増やさないためにも協力を-

以上、この記事では国際ロマンス詐欺について各所に情報提供を行うことは、被害回復や将来の被害防止のために重要となることを解説していきました。
我々の社会から国際ロマンス詐欺の被害者が減るということは、それだけ社会が平和となり住みやすい世の中になるということを意味しています。
将来の被害者を増やさないようにするためにも、国際ロマンス詐欺に遭遇した際には情報提供にご協力ください。