「国際ロマンス詐欺」とは、SNSやマッチングアプリを通じて知り合った欧米系や紛争発生国に在住すると語る異性から、交際や結婚を申し込まれてその後にさまざまな金銭的要求を受ける詐欺のことを言います。
シリアで活動するアメリカ人の女性軍人を追いかけた結果、国際ロマンス詐欺であったことが発覚した事例がありました。
それでは、国際ロマンス詐欺の詐欺師は、どのような手口でお金をだまし取ろうとするのでしょうか。そして軍人や兵士を名乗ることが多い理由についても解説していきます。
■この記事でわかること
・軍人を名乗る詐欺師が多く世界的に注意喚起されていることがわかる
・シリアで活動する女性軍人を名乗った国際ロマンス詐欺の具体的な事例がわかる
・国際ロマンス詐欺で軍人を名乗る詐欺師が増えている4つ理由がわかる
・国際ロマンス詐欺のよくある手口として注意すべき軍人の特徴がわかる
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世界的に注意されている軍人を名乗る詐欺師

全国的に国際ロマンス詐欺の被害相談が増えてきています。2023年近年、国際ロマンス詐欺には多方面から注意喚起がなされているため警戒しておく必要があります。
医療法人のサイトには注意書きが掲載されている
ウクライナやシリア、イエメンなどの世界各地の紛争地帯や災害被災地で医療支援活動を実施している国際的NGO(非営利団体)である「国境なき医師団(MSF)」の公式ホームページには「詐欺にご注意ください」という注意書きが掲載されています。
気になる内容としては、以下のようなものです。
近年「国境なき医師団」の医師やスタッフを語る人物が、ツイッターやインスタなどのSNSを通して連絡をとってきて、個人情報を聞きだしたり、個人的に資金援助を求めたりする事案が頻発しているとのことです。
報告されている具体的な事例としては以下のようなものです。
「国境なき医師団」の医師・スタッフを名乗る人物が、
・交際や結婚を申し込み親密になったところで、荷物の受取りや金銭の授受のために名前、住所、電話番号、パスポート番号、LINE IDを聞き出そうとした
・休暇申請や日本へ渡航するために、信頼できる人の個人情報が必要なため名前、住所、電話番号、パスポート番号、LINE IDなどを聞き出そうとした
・荷物の受取りを依頼して運動会社から受け取りのために必要な費用を請求された
・紛争地で誘拐・負傷・病気・入院など緊急事態が発生したため、身代金・入院費用などを送金するように要求された など
といった詐欺事例が報告されています。
スタッフから一般人にSNSで接触することはないと公言している
しかし、この「国境なき医師団」の公式ホームページには以下のように、一般人に直接接触することはないことが公言されています。
「国境なき医師団のいかなるスタッフ(医療者、非医療従事者、事務局員など)も、SNSなどで一般の方がたに近づき、個人的に何らかの費用の立て替え、援助、支払いなどの依頼をすることはありません。不審な電話や手紙、電子メール、SNSメッセージなどが届いても、むやみに振り込みや返信をしないでください」
「国境なき医師団」の広報担当者によると、電話やメールなどで「MSFのスタッフからお金の支払いを要求されている」「スタッフを名乗る人とやり取りしたが連絡がとれなくなってしまった」という相談の問い合わせが多発しているため、公式ホームページ上に注意喚起を掲載する必要が生じたとのことです。
http://yoko.lawyer/media/kokusairomance-gunzin/
シリアで活動する女性軍人に騙される?国際ロマンス詐欺の事例

ここでは、実際に起こった国際ロマンス詐欺の詐欺事例を紹介していきます。この事例はシリアで活動している女性軍人を名乗る人物から連絡を受けたケースです。
国際ロマンス詐欺の手口の流れに沿って詳細を解説していきましょう。
Facebookの投稿に知らない外国人からいいねが届く
Facebookの公開投稿に見知らぬアカウントから「いいね」が届きます。
「いいね」の投稿から時期を待たずに、同じアカウントから個人宛に連絡が届きます。「こんにちは。私は大阪府出身の医師です。あなたはどこに住んでいますか?」という趣旨のダイレクトメッセージが送られてきました。
この人物のアカウントを確認すると、プロフィール画像は欧米系の白人女性でした。自己紹介文には、「大阪府〇〇市出身、アメリカ軍の整形外科医、シリアの首都ダマスカスで国連下で活動中」である旨が記載されていました。
シリア内戦の国連PKOに参加しているという情報を得る
SNS内のプロフィールから、この人物はアメリカ軍の女性軍人で、現在紛争地帯であるシリアの首都ダマスカスで活動してるらしいということが分かりました。
さらにこの人物からダイレクトメッセージで、「私は、現在シリア内戦で国連PKOに参加している」という内容の連絡がきました。
ここまで聞いてみると、多くの人がこのアカウントの人物は、紛争地域・武装地域で大儀のために活動している立派な人物だと思ってしまうのではないでしょうか。
しかし、この段階でこのアカウントの人物は大きな嘘をついており、実際にはシリアにはいないこと、さらにはアメリカ軍の軍人であることすら疑わしいことが分かるのです。
どういうことかというと、中東情勢に明るい人でなければ誰もが騙されるところですが、国際連合はシリアの内戦にPKO(国連平和維持活動)の人員を派遣していないのです。
そしてアメリカ合衆国はシリアと国交を断絶しているため、アメリカ軍の軍人がシリアの首都ダマスカスに派遣されるということは、あり得ないことなのです。
しかし、日本人の多くが国際情勢を詳しく知っているわけではありませんし、まして現在の中東情勢を正確に理解している人はもっと少ないでしょう。
そのためこのアカウントから連絡を受けた人たちは、本当のことを言っていると簡単に騙されてしまう可能性があるのです。
シリアから荷物とお金を送るとして個人情報を訪ねてくる
このアカウントの人物に「私は今、〇〇にいます」と返事をしたところ、過剰な感謝を述べる返答が返ってきました。
その後この人物からは朝の挨拶や、相手が今何をしているのかをしきりに尋ねるメッセージが数時間おきに送られてくるようになりました。
このアカウントの人物は、10代の子どものいる40代のシングルマザーで紛争地域での活動を終えたら日本に渡航して子どもと一緒に暮らしたいとのことでした。
数日やり取りを続けるうちに、「あなたを愛している。日本に行くから一緒に暮らしましょう」と言い出します。
しかしこのアカウントの人物とは英語でのやり取りをメインとしていましたが、およそネイティブスピーカーとは思えないほど単語や文法のミスが多いものでした。
相手はシリアから荷物と現金を輸送すると言いだし100ドル札が詰め込まれたアタッシュケースの写真を送り付け、相手男性の住所、電話番号、LINE IDなど個人情報をしつこく聞き出そうとしてきました。

送金をねだられたが運営側で削除された
ここでネタばらしをし、最初から先方の述べている嘘に気づいたいたことを告げ、本当はどこから連絡してきているのか詰問したところ相手は態度を変えました。
「実は私はアフリカ出身で、家族を養うために現金が必要です。少額でもいいので送金して欲しい」と泣き脅しで送金をねだってきました。
相手の要求に応じないでいたところ事件は意外な顛末で終了することになります。
Facebookの運営側がこの人物のアカウントを迷惑アカウントと認定したのか、先方のメッセージを開いても「このメッセージは悪用かスパムと判定されたのでご利用できません」が表記されていました。他のユーザーから運営側に詐欺アカウントの恐れありという通報がなされたようです。
そのため、この人物のFacebookアカウントは強制的に停止され、その後連絡を取ることはできなくなりました。
軍人を名乗る詐欺師が増えているのはどうして?

それではなぜ国際ロマンス詐欺の詐欺師は軍人を語るケースが多いのでしょうか。
その理由は、国際ロマンス詐欺の詐欺の手口に密接に関連したものですので、以下で詳しく解説していきます。
悲観的なエピソードを作りやすく同情心を煽れる
まず詐欺師は軍人を名乗ることで、悲観的・悲劇的なエピソードを創作しやすくなります。
高いモラルを持って入隊し平和維持のために戦っているというエピソードや、母国に家族を残して命をかけて活動しているというエピソードなどは、多くの人の同情心や関心を買うことができます。
具体的に国際ロマンス詐欺の詐欺師が多用する軍人の悲劇的なエピソードは以下のようなものです。
・数年、家族と離れて紛争地域で活動を続けており、早く帰りたいと思っている
・内戦が激しい地域に赴任しており、友人・同僚を戦いの中で亡くしている
・紛争地域で負傷して治療を受けているが、お金が不足しているので十分な医療を受けられないでいる など
そのような設定の中で「いつか日本で一緒に暮らしたい」「お金を送って欲しい」という話に持っていくため、被害者は相手への同情心とともに相手を経済的に援助したいと思わされてしまうのです。
お金に困っていないから詐欺師でないと思い込ませる
軍人はアメリカ国内でも給料が高いとされる職業に該当します。
従軍期間が長くなり位が高くなるほど当然受け取れる給料も高くなります。
そのため軍人であれば十分な給与を支給されていると思わせられるため、一般的にお金に困っていない社会的な地位の高い人物であると誤解させることができるのです。
そのため、お金に困っていないと思われる人物から「お金を貸してほしい」とお願いされた場合には、「本当に困っている」「必ず返してくれるだろう」と考え、まさか自分からお金をだまし取ろうとしているとは思わない被害者も多いのです。
社会的地位が高いため信頼されやすいと思っている
また詐欺師は、軍人が社会的なステータスが高いため信頼されやすいという点を悪用しようとしています。
軍人は軍規を守り、紛争地域で命を懸けて活動していることから、そのような説明をすると社会的な尊敬を集めやすい職業であることを詐欺師は知っています。
したがって、そのような社会的な尊敬やステータスの高さを利用して被害者に詐欺師ではないかという疑念を抱かせないように印象操作しているのです。
社会的なステータスが高い職業であることで、やり取りしている相手に「権威性」のようなものも感じさせることもできます。すなわち、「軍人のように立派な人物が自分からお金をだまし取ろうと画策しているはずはない」と潜在的に発想させることが可能になるのです。
結婚相手として魅力的であると感じる人が多いから
さらに、軍人の異性の場合には結婚相手として魅力的な人物であると感じる人が多いというのも、詐欺師が軍人を語る理由のひとつです。
上記で説明してきたように軍人は、社会的な地位が高く一般に十分な給料を受け取っているイメージがあるため、結婚相手としてもハイスペックな人物であるという印象を与えることができます。
軍人であれば、一般的に過酷な訓練を経て肉体的にも精神的にも逞しい人物を容易に想像することができるでしょう。したがって、軍人という単語から、心身ともにたくましく、決められたルールを必ず守り忠義を尽くす人物であると思う人は多いでしょう。
したがって男女を問わず、軍人は交際相手・結婚相手として魅力であると感じる人は多いのです。
さらに日本人の中には世界中に派遣される職業軍人として身近な人物を連想することが難しい人が多く、自分の知らない世界をたくさん見てきた軍人というだけで魅力的だと思わせることもできます。
こんな軍人に注意して|よくある手口とその理由

それでは、国際ロマンス詐欺の詐欺師に騙されないようにするにはどうすればよいのでしょうか。
国際ロマンス詐欺には共通したよくある手口があるため、以下で挙げる手口の特徴に複数あてはまるような場合には詐欺を警戒してください。
結婚や交際をちらつかせて個人情報を聞き出してくる
結婚や交際をちらつかせて個人情報を聞き出そうとてくる人物は、国際ロマンス詐欺の詐欺師の可能性があります。
国際ロマンス詐欺の詐欺師の最終的な目標は、被害者から金銭や財産などをだまし取ることです。
詐欺師は交際や結婚を奇貨として、ターゲットから「資産・プレゼントの受け渡しとして」「将来の生活費を捻出するための投資資金として」「日本で暮らすための渡航費として」など、ありとあらゆる言い分でお金を支払わそうと企んでいます。
そして、そのような金銭的な支払いを要求する前提として、ターゲットの氏名、住所、電話番号、LINE IDなどを聞き出そうとしてきます。
お金をだまし取られないようにするためにも、SNSやインターネット上で出会った人物に簡単に個人情報を伝えることは絶対に避けてください。
荷物を送ると言って関税を支払わせようとする
荷物を送ると連絡を入れて関税や手数料を支払わせようとする詐欺事例も報告されています。
具体的な手口としては、SNS・インターネット上で仲良くなった外国籍を名乗る人物に「あなた宛てにある荷物を送る。私のために受け取って欲しい」と依頼されるというものです。
相手に個人情報を教えると次は、配送業者だという人から電話やメールで連絡が来て「受取人が手数料・関税を払わなければ荷物を引き渡せない」と言われます。
荷物を受けとるのに費用がかかると言われて困っていると、その配送業者から「すぐに支払いをしてもらえないと荷物は本国に送り戻される」と急かしてくるため、多くの被害者が焦ってお金を支払ってしまう、という流れで騙し取られてしまいます。
この他にも類似の事例として、以下のような手口もあります。
・プレゼントを贈ると言われ、指定されたウェブサイトで状況確認のためアクセスすると配送手数料の支払いを請求されてしまった
・慈善事業として財産譲渡を受けてほしいと依頼されキャッシュカードを受け取るように誘導された結果、高額な手数料を請求されてしまった
・医師を名乗る相手のパスポートが送付されたため信用して荷物の受取りを了承したところ、配送トラブルが生じて手数料や罰金などを請求されてしまった など
現地から日本に行くための費用を請求してくる
国際ロマンス詐欺の手口として、現地から日本に行くための渡航費用を請求してくるものもあります。
実際にあった国際ロマンス詐欺の手口は以下のようなものです。
SNSを通じて米国軍人の男性を名乗る人物と仲良くなったところ、休暇を取って日本に渡航したいと言われました。しかし現在紛争地域に派遣されており休暇の許可書をとるための手続き費用が払えないと言われます。
「国連に費用を立て替えて支払ってほしい」と依頼され、国連を語る組織から送金先情報が記載されたメールが届きます。
詐欺の疑いがあるため銀行窓口が対応してくれない旨を相手方に告げると、別の送金先を利用するようにメールで指示が届きました。
このような事例のほかにも、紛争発生地から日本に渡航するための航空運賃を要求してくる事例も報告されています。
まとめ:軍人からお金を要求されたら詐欺の可能性が高いから注意

以上で解説してきたように、軍人からお金を要求されるケースは国際ロマンス詐欺である可能性が高いです。
解説したように軍人を名乗る人物からの金銭の詐取の手口は巧妙かつ多種多様です。そのため思いもよらないような事情や言い分で、お金をだまし取られる可能性があるのです。
したがってSNSやインターネットを通じて出会った軍人を名乗る人物には、簡単に自分の個人情報を与えない、お金の支払いを要求された場合には絶対に断るということを徹底しておけば、国際ロマンス詐欺の詐欺被害に遭う可能性は少なくできます。
そしてもし国際ロマンス詐欺の詐欺被害に遭ったかもしれない、お金を払ってしまったが取り返したいと思っている方は、一度弁護士に相談するのがおすすめです。
ケースによっては、相手に交付した金銭や財産などを取り戻せる可能性がありますので、国際ロマンス詐欺事件に精通した当事務所の弁護士に、一度相談してみてください。
http://yoko.lawyer/media/romance-soudan/