- 性別:男性
- 詐欺の種類:国際ロマンス詐欺
- 被害額:500万円
- 職業:会社役員
今思うと「やられた!」という後悔の念しかありません。
会社の代表からも、顧問弁護士からも、そして女房からも「こってり」絞られた私の懺悔をお聞きください。
国際ロマンス詐欺といえば「出会わない詐欺」が主流と聞きます。しかし私の場合は「ヨコシマな心」を持ってしまったがため、実際に「マッチングしてしまった」のです。
そこで心と一緒に、500万円を奪われました。
どうか、笑ってやってください。
事の顛末をお話しいたします。
輸入販売業で外国語がペラペラな私。その語学力ゆえに…
50代男性、小さな中古車輸入販売業で役員をしています。
会社では輸入や海外とのやり取り全般を統括する立場にあるため、各種SNSを駆使して海外の方たちとのやりとりや交流を深める日々です。
中には昔から繋がっている海外の「ブラザーたち」と旧交を温めることもあります。
昔は直接しゃべるとなれば、国際電話でしたから、今時分は通話代金も随分と安くなったものです。
おかげさまで英語も中国語も、比較的ペラペラです。
N○Kのラジオ講座で鍛えたにしては、まずまずの語学力を自負しています。(笑)
また生来「ベシャリ」な性分も手伝い、年齢と役職にしてはフットワーク軽く、比較的どこの飲み会や交流会にも顔を出すようにしています。
車を輸入して、売る、という商売であるからして、どこでご縁が繋がるかも分からないからです。
後は「ザ・役得」で、夜の蝶から素人の女の子まで、遊びにも不自由せず「遅咲きの青春を謳歌」しております。※なお同好の士も募集中です(笑)
マッチングアプリで知り合ったグラマラス中国美女にメロメロ!
ある日。
日課たるマッチングアプリの「大巡行」(注:パトロールの古い言い方)を行っていたところ、出会ってしまったのです。
推定F65級、チャイナドレスの似合いそうな中国美女に。
それも大変希少な、日本国は東京都のご在住であります。これは私のライフワークとして会いに行かねばなりません!
こうなれば、もはや会社業務なぞ些末なことで、もっとこう、どこか「崇高な使命感」にかられて私は彼女と慎重かつ、ときには大胆に、メッセージのやり取りを続けました。
「サクラサク」─F級中国美女との接触に成功
ここで本体験談をお読みの諸兄へ、謹んでご報告いたします。
不肖私、メッセージのやり取りを続けること2週間、ついに美女との密会の約束を取り付けました。
ついに、未知との接近遭遇であります。
これが接近挿○となる可能性も鑑み、万全の対策を取って都内の某高級マンションへお邪魔いたしました。
ラジオ講座仕込みの卓越した中国語でインターホンに「晩上好,私的恋人!(こんばんは、ハニー)」と、気持ち低めの声で流し込み、彼女の部屋へ入室します。
彼女と対面した刹那、私は「勝利を確信」しました。
見紛うことなき、写真の彼女がそこにいたからです。
・・・が、部屋の奥にもう一人の影。
男性でした。
すわ「このまま美人局か!?」と思ったのもつかの間、彼女は「彼は私が呼んだバーテンさんよ。ご時世がご時世だから、今夜はここで飲み明かしましょう?いい時間になったら、彼は帰るわよ(笑)」と私の心配を解きほぐしてくれました。
兵どもが夢の跡。ついでに消えた彼女と500万
ところで、このバーテンダーの男。
とにかく酒を作るのが上手でした。酒が美味いのです。
さぞや名のあるオーセンティックバーで修行したと見え、華麗な二段振りで次々と度数の高い酒を振る舞ってくれました。人品も卑しからず、シャツから時計まで高級品でした。
彼女も私も文字通り浴びるように酒を飲み、楽しいひと時を過ごしました。
聞けばバーテンの男も中国は山東省の出身、酒が入れば入るほど饒舌になる私の語学力も相まって、気づけば正体を失うほど飲んでしまいました。
ここが私の記憶の最終地点です。
─次に気が付いた時、彼女はそこにはいませんでした。
部屋にいるのは私とバーテンの男。それも何やら激怒しています。
「山東省なまり」のきつい彼から話を聞くと
・お酒を飲んだ後、お前が暴れたため、女性は逃げてしまった。今は警察にでもいるのではないか
・お前が暴れた際、俺(バーテン)の時計が壊れたので弁償してほしい
と言います。
ガンガン響く頭痛に苛まれながら「とうとう私もここまで悪酔いするようになったか」と反省し、バーテンの時計の代金を聞きます。
相手が相手ですし、何より自分の不始末は自ら始末せねばなりません。
準備万端が座右の銘である私はこの日、シティホテルのスイートなど調達できるだけの現金と、あとはダ○ナースのカードを持っていました。
してその時計の弁償額、500万円。
一気に酔いが覚めました。
とても持ち合わせが足らない。
確かにテーブルの上には粉々になったロレックスデイトナが「鎮座ましまして」おり、彼女との関係のこともあるので500万で手を打ってやると言うのです。
ここで私は薄々「やられた!」と勘付き始めるも後の祭り。
粉々になっているのは、おそらくは本物のロレックスデイトナでしょう。始めからこのようなジャンク品をもうひとつ、用意していたのだと思います。
ダメ元で私が個人的に加入している対物補償の話もしてみましたが「三日後に中国へ帰るので、待てるわけがないだろう」と当然聞き入れられず、さらに支払いを渋っていると、どこかへ電話をかけ始めました。
私が中国語を「わかりすぎる」のも考えもので、男が電話している相手がいわゆる「本物のその筋の方たち」であることは容易に想像がつきました。
それもかなり強行的な手段に出ようとしていることも、手に取るように分かったのです。
「魚の餌」という言葉が聞こえたところで私はたまらず「わかった!払おうじゃないか兄弟!ただし、コンビニATMで1度に引き出せる金額には上限がある。だからコンビニを何件か一緒に『はしご』してくれないか」と打診し、私は中国人の男とともに、夜の街でコンビニを巡礼することになりました。
流行りの言葉でいえば「夜を駆け」たのです。(ここ、笑うとこですヨ!)
最終的に脅し取られた金額は500万円。
あとは、プライスレスで私の心も盗まれました。
「現金その場限り」は商売に関わる人間なら誰しもがよく理解していることで、当然後から被害申告をしようにも、どうにもなりません。
残ったのは後悔だけで、せめてこの「どうしようもない話」が体験談として諸兄にご笑覧頂ければ、それで少しは私も救われるというもので、本寄稿を執筆しています。
国際ロマンス詐欺には「実際にマッチングできてしまうパターン」もこの通り、あります。諸兄におかれましては、どこかご注意のうえ健全な恋愛をお楽しみください。
