結婚詐欺で実際に逮捕されるケースはどのようなものなのでしょうか。この記事では実際に結婚詐欺の容疑で犯人が逮捕された事例をわかりやすく解説します。
また結婚詐欺は、2人きりでのやり取りのみであったり被害者の内心にかかわる問題でもあるため、立証が難しいと言われることがあります。そこで結婚詐欺の被害に遭った場合にはどのような対処法をとればよいのでしょうか。
- 結婚詐欺が犯罪に該当する要件を知りたい
- 結婚詐欺で実際に逮捕された事例について具体的に知りたい
- 結婚詐欺で逮捕された場合に罰則が決まるポイントを知りたい
- 国際ロマンス詐欺に騙されないためにできることを知りたい
- 結婚詐欺の被害に遭った場合に取るべき対処法を知りたい
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結婚詐欺で逮捕される要件や罰則は?基本情報をチェック

結婚詐欺にあたる行為はどのような基準や要件で判断されているのでしょうか。また結婚詐欺と言われた場合、行為者にはどのようなペナルティが科されるのでしょうか。以下では結婚詐欺の構成要件と法定刑について分かりやすく解説していきます。
結婚詐欺として認められる要件について
刑法の条文に「結婚詐欺」そのものを規定した犯罪類型はありません。そのため結婚詐欺が刑法上犯罪にあたるか否かは、一般的な「詐欺罪」の構成要件に該当するか否かが問題となります。
刑法第246条1項には、「人を欺いて財物を交付させた」場合、詐欺罪が成立すると規定されています。
そのため詐欺罪の構成要件は①欺罔行為、②錯誤、③交付行為、④財産移転です。以下ではそれぞれの要件を詳述していきましょう。
欺罔行為|嘘をついて騙すこと
詐欺罪が成立するためには「人を欺」く、「欺罔(ぎもう)行為」が必要です。
欺罔行為とは、財物交付の判断の基礎となる「重要な事項」について、他人を錯誤に陥れるような「表示」をすることをいいます。
つまりお金を支払うのに重要な理由となる事柄について相手に嘘をついてだます行為のことだということができます。
具体的には金銭を返す意思もないにもかかわらず、「結婚したら借りたお金を返す」と言ったり、「この支払いが完了すれば結婚できる」と相手に伝えたりする行為は欺罔行為にあたる可能性が高いです。またこの他にも、将来夫婦になりたいと示して「結婚資金や新生活のための準備」や「借金の立て替え払い」名目などと偽ってお金を要求する行為は詐欺罪のいうところの欺罔行為にあたるでしょう。
錯誤行為|嘘を信じてしまい騙されること
「錯誤」とは、欺罔行為を受けた相手がだまされることをさします。
もし仮に、結婚詐欺による欺罔行為を相手が行ったとしても、被害者側が結婚詐欺であると見破っていたような場合はどうでしょうか。この場合被害者は騙されていないため、欺罔行為による錯誤が存在しません。したがって詐欺罪の既遂は成立せず、未遂が成立するにとどまります。
結婚詐欺の場合は、相手方が「本当に結婚してくれる」ことや「結婚した後にお金を返してくれるもの」と誤信している場合には錯誤に陥っていたと評価できます。
交付行為|プレゼントやお金を贈ったこと
「交付行為」とは、被害者が欺罔行為により騙され錯誤に基づいて、物や財産上の利益を行為者側に交付する行為のことをいいます。
交付行為が成立するためには被害者側に交付意思が必要です。つまり物の占有が自分から離れることの認識が必要で、自分のもとに占有が残っている認識では足りません。
そのため「将来結婚する」と誤信している場合でも、被害者が知らない所で被害者の保管するお金を勝手に持ち出したような場合には「交付行為」も「占有移転の認識」もありませんので詐欺罪は成立しません。このような場合には占有者の意思に反した占有移転としての窃盗罪の成否が問題となります。
財産移転|お金が相手に移ること
「財産移転」とは、被害者の交付行為に基づいて物や財産上の利益が行為者側に移転することをいいます。
移転する物・利益について被害者側に完全な認識がなくとも、財物移転の形式的事実を認識できてれば交付行為・財産移転は認められます。つまり、相手に現金が入った財布を引き渡した場合、意思に基づいて引き渡していれば、その中身について具体的な金額を把握していなくてもよいということです。
詐欺罪は物や財産上の利益が相手方に「移転した時」に既遂になると考えられています。
そのためここまで解説したいずれかの要件が欠けた場合には不可罰または未遂が成立するにとどまります。
結婚詐欺で逮捕された場合の罰則について
「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」と規定されています(刑法第241条1項)。
そのため結婚詐害について詐欺罪に該当すると判断された場合には10年以下の懲役刑が罰則として科されます。懲役刑とは刑事施設に拘置して所定の作業(これを「刑務作業」といいます)を行わせる刑罰です(同12条参照)。
結婚詐欺で逮捕された実例はある?実際のケースについて

結婚詐欺を理由に犯人が逮捕された事例はあるのでしょうか。
結婚詐欺は詐欺師の側から「被害者側が勝手に結婚すると誤信していただけ」と反論されたり、「明確に結婚する約束などはしていない」と反論されるおそれがあります。
また詐欺師は巧妙に証拠や資料が残らないように行動するため立証が難しいケースであると言われることもあります。ここでは実際に結婚詐欺で犯人が逮捕されたケースを紹介しましょう。
実例①婚活パーティーで知り合った相手に騙されたケース
この事例では結婚詐欺によって女性から現金をだまし取ったとして45歳の住所不定・無職の男性が逮捕されました。
被害者は埼玉県在住の30代の会社員の女性です。
結婚詐欺師の男性はこの被害女性と婚活パーティーで知り合いました。この男性は某有名国立大学で講師をしているなどと身分を偽っていました。その後、2人は交流を続け出会って数週間で男性は女性に対して「幸せにする」と言って結婚の申し込みをしました。女性はプロポーズに応じましたが婚姻届けは提出されないまま時間が流れます。その間、男性は投資名目やトラブル解決名目で女性に現金を要求し続けていました。その際この男性は「海外銀行に投資口座を持っているので現金を預けてほしい」と嘘をついて振り込みを要求していました。女性は男性と結婚できるものと信じ込み現金を渡しましたが、合計約390万円を渡したところ、その男性とは急に連絡が取れなくなってしまいました。
結婚詐欺かもしれないと思い女性は警察に被害を届け出たため事件が発覚しました。この男性は詐欺容疑で逮捕されました。
また警視庁は捜査の結果、男性はこの被害女性を含め合計7人から結婚詐欺の疑いがあるとして相談を受けており、被害総額は約3900万円に上ると公表されています。
実例②36歳の女性が1億円以上の被害に遭ったケース
この事例では、マッチングアプリを利用し交際に発展した女性から、結婚をほのめかして現金をだまし取った疑いで東京都渋谷区に居住する当時34歳の会社員男性が逮捕されました。
被害者となったのは京都市伏見区に居住する36歳の女性です。この女性はマッチングアプリで男性と出会い交流が始まりました。男性は女性に対して嘘の名前と住所を伝え交際を続け、関係が含まったところで「結婚したい」と女性に対してプロポーズを申し出ました。女性は男性が本気で結婚を考えてくれいると誤信して結婚について真剣に考えていました。そのような中で男性は女性に対して外国為替証拠金取引(FX投資)を持ちかけ、投資をやめたくなったらいつでも返金すると偽り女性に現金の交付を要求しました。
女性は男性が真剣に結婚を考えてくれているものと信頼して男性に誘われるままに合計1億1500万円を男性の金融機関口座に振り込みました。
この女性は男性が約束していた配当金がいつまでたっても振り込まれないことを不審に思い警察署に相談していました。
この男性は詐欺などの疑いで逮捕されましたが、女性から交付を受けた現金については「預かっていただけだ」と容疑を否認しています。さらに捜査の結果この男性は既婚者であったことが判明しています。
実例③結婚を持ちかけて3,000万円以上騙し取ったケース
この事例では、出会い系サイトを利用して知り合った女性に対し、結婚をほのめかして現金をだまし取ったという疑いで住所不定・会社社長の当時34歳の男性が逮捕されました。
この事例で被害者となったのは東京都に在住する当時33歳の女性です。この女性は出会い系サイトで男性と知り合い、「自分は20億円もの預金口座を保有しており、年収は3億円にのぼる」という虚偽の資産状況を伝えて女性に接触していました。その他にも司法書士や宅地建物取引士、行政書士の資格を有しているなどと嘘の経歴を伝えてだましていました。交際が進展する中で男性は女性に対して「結婚したい」と申し出てプロポーズしました。婚約を喜ぶ女性に対してこの男性は「君が預金を持っていたら心配」であると言い、「すべての預金を預かってあげる」と告げました。そのさい「返して欲しい場合には全額返す」と説明して、女性から合計3674万円の現金をだまし取りました。
この男性は結婚詐欺の容疑で警察に逮捕されましたが、容疑については全面的に否認しています。捜査の結果、この男性は既婚者であるととが判明し、さらにマッチングアプリで知り合った別の女性からも1億1500万円をだまし取った詐欺の容疑で起訴されていました。
結婚詐欺で逮捕された場合に罰則が決まるポイント

結婚詐欺で逮捕された場合には、どのようなポイントで罰則が決定されるのでしょうか。具体的な量刑についてはケースバイケースで判断されることになりますので、逮捕された場合に捜査機関や裁判所に対して訴える必要がある考慮事項について以下で解説していきます。
被害額や前科の有無についてもチェックされる
詐欺罪が成立した場合には「10年以下の懲役」が科されると説明しました。しかしすべての場合で懲役刑が執行されるわけではなく、また刑期についても事案に応じて裁判所が判断します。
詐欺罪が成立し、刑罰の内容を決定する際には以下のような事項が考慮されます。
・結婚詐欺の被害の金額は大きいか否か
・被害者の被害感情は強いか否か
・被害について賠償済であるか否か
・被害者と示談が成立しているか否か
・結婚詐欺の手口は悪質なものであるか否か
・前科や前歴はないか
また懲役刑が言い渡されたとしても必ず刑務所に入るというわけではありません。言い渡された懲役刑の「刑期が3年以下」で「初犯」などの場合には、1年以上5年以下の期間について刑の執行が全部または一部猶予される可能性があります。これを「執行猶予」といいますが、執行猶予の有無を判断する際にも上記の事項は重要な考慮要素となります。
結婚詐欺の被害にあったら?やるべきことについて

それでは結婚詐欺に遭った場合に、被害者はどのような対応をとることができるのでしょうか。相手方を訴える場合にも事前準備として留意しておく点がありますので以下で詳しく解説していきましょう。
最初から騙す目的で近づいてきたことがわかる証拠を集める
結婚詐欺を証明するためには「詐欺により相手の財産をだまし取ろうとする認識」が最初からあったことを示す証拠が重要となります。詐欺師が「だますつもりはなかった」「最初は結婚しようと思ったが途中で翻意した」と反論できる余地をつぶしておく必要があります。
最初から被害者をだます目的で接触してきていることを示す証拠や理由としては以下のようなものが考えられます。
・相手方が既婚者であるため、最初から結婚する目的はなかった
・相手方が伝えてきた氏名・住所・勤務先などの個人情報が虚偽のものであったため、真剣に交際する目的を有していなかった
・複数の女性相手に同様な手口で結婚を持ちかけているため、被害者に対しても真剣交際の意図はなかった
・相手方が持ちかけてきた投資の話が全て虚偽であったため、最初から現金をだまし取る目的で近づいてきた
具体的な詐欺の手口を立証するためにも相手とのLINEやメールのやり取りは削除されないようにスクリーンショットなどで保存しておくことが重要です。
お金関係のことは送金履歴など細かく証拠を取っておく
お金にかかわることはさまざまなトラブルに発展する可能性がありますので入出金に関する預金通帳や銀行口座アプリの履歴は適切に保管しておきましょう。
「いつ」「誰に対して」「いくら」の支払いをしたのかという事実は詐欺の被害を立証するために非常に重要な情報となります。紙の預金通帳の場合にはメモ書きで「使途」や「出金理由」などをその都度細かく記載しておけば信憑性が高まります。
また交際期間中にお金の貸し借りを依頼されたり、借金の肩代わりをお願いされた場合には「借用書」や「金銭消費貸借契約書」を作成することも重要です。そこまで厳格な書類を用意できなかったとしても客観的にいつ・いくら・どのような目的で出金したのかについては明確になるメモ書きや備忘録を残しておきましょう。
他に被害者がいないかどうかSNS等で調べてみる
相手の言動に不信感や疑問を持った場合、同様の手口で被害に遭っている人が他にいないかチェックしてみてください。既に前科・前歴がある場合にはネットニュースや記事などメディアで取り上げられている可能性もあります。また現在進行形で行われている結婚詐欺についてもツイッターなどのSNSで同一人物から同じような被害に遭って困っている人が見つかる可能性があります。
複数の被害者がいる結婚詐欺の場合には重大事件として警察などの捜査機関も、さらなる被害者を出さないようにするために迅速に対応して、立件に向け動いてくれる可能性もあります。
結婚詐欺に精通している弁護士に相談してみる
結婚詐欺に遭ったのではないかと不安になっている方は、結婚詐欺に精通している弁護士に相談することがおすすめです。豊富な経験や解決実績から適切なアドバイスやサポートを期待できます。また弁護士に依頼した場合には相手の氏名や住所が分からない場合でも弁護士会照会などを利用して身元を調査することも可能になる場合があります。
ここで結婚詐欺事件に精通している弁護士を探す際には、事務所のホームページに結婚詐欺に関する最新の情報や弁護士としての解決実績を掲載しているかどうか、という点はひとつの参考となるでしょう。
まとめ|結婚詐欺で逮捕された実例をチェックしてみよう

ご自身ケースで自分が結婚詐欺に遭っているかもしれないと不安に思われている方は結婚詐欺として逮捕された実例を参考に確認してみてください。同様な手口や被害状況の場合には結婚詐欺に該当する可能性があります。
そのうえで、ご自身のケースが結婚詐欺にあたるのか、または被害に遭って困っているという方は是非一度当事務所の弁護士に相談してください。一人で悩まず法律のプロに相談することで適切な解決策が見つかる可能性があります。
